今回も引き続き自動運転関連の特許について考えていきたいと思います。前回は、自動車業界トップを走るトヨタの自動運転について調べてみました。関連する特許ポートフォリオを分析した結果、自動運転を支える「通信システム」「障害物の認識システム」では、7割強の関連特許はトヨタ自社で取得していることがわかりました。トヨタの底力を再確認しました(前回の内容にご興味のある方はこちらへどうぞ)。
では、同じく日本有数の大手自動車メーカーである日産はいかがでしょうか。日産は自動運転の開発に遅れをとっているのでしょうか。結論から言いますと、関連する特許ポートフォリオの中に日産は宝物をもっているのです!今回は、日産の宝物を発掘しましょう。
まず、オプトロニクス社2019年の調査によると、日本国内の自動運転関連特許の出願人ランキングでは、日産はトヨタより出願件数が少ないものの、トップ5に入っています。
では、前述した「通信システム」「障害物認識システム」分野では日産はどのくらいの特許を取得しているでしょうか。Due Diligenceで調べてみましょう。
地域別の特許分布
まず、トヨタと日産の所有する「通信システム」「障害物認識システム」に関する自動運転関連特許ポートフォリオを確認します(図1と図2では存続特許のみが表示されています)。
図1と図2を比較すると、「通信システム」「障害物認識システム」の2分野では、2社の出願地域はほぼ同じですが、トヨタと日産の取得特許はそれぞれ1,059件と450件となっており、トヨタは日産より取得特許が約2.3倍程多いことがわかります。関連分野において、トヨタは日産より積極的に特許を取得していると言えます。
ここでは一歩踏み込んで、特許間の引用関係に着目します(引用・被引用情報の活用に興味をお持ちの方は、特許庁に掲載されているこちらをご参照ください)。
特許間の引用関係
図3のように、トヨタとトヨタ傘下のデンソンは、日産の特許群を引用している特許ファミリー数がそれぞれ64件と47件となっています。一方、図4のように、日産はトヨタの特許群を引用している特許ファミリー数が36件となっています。
こうした事実は次の2点を示唆します。即ち、
- 自動運転関連の「通信システム」「障害物認識システム」の分野では日産はトヨタより開発が先行している。
- 日産はトヨタが開発している関連領域において重要な技術を握っている可能性がある。
注目すべき日産の特許ファミリー
ここでは更に、同分野においてトヨタの特許によく引用される日産の特許ファミリーを確認したいと思います。Due Diligenceのダッシュボートを利用してチェックしましょう。
図5のように、同分野において、トヨタの特許に最も引用されているのは日産の米国特許第8,155,879号(ファミリーID:40673229)、米国特許第6,604,042号(ファミリーID:18870506)です。発明の名称から運転アシスタント、自動ブレーキの関連技術であることがわかります。ちなみに、その引用情報のほとんどは審査官引用です。
まとめ
以上、日産の自動運転関連の特許ポートフォリオを調査しました。「通信システム」「障害物認識システム」分野において、日産はトヨタほど多くの特許を持っていませんが、関連特許の被引用回数が多く、他社牽制力のある特許を保有していることが分かりました。日産は自動運転関連の特許において重要な「宝物」を持っていると言えましょう。
自社(又は他社)の特許ポートフォリオの中の宝物を探してみませんか?
早速Due Diligenceを利用して調べましょう。