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最近話題になっている ニュース と言えばファーウェイ(Huawei Technologies) に関するニュースであるだろう。トランプ大統領は、重大な国家危機とはならないファーウェイの製品販売については再開されるだろうと述べ、米国は最近ファーウェイに対する強硬な姿勢をやや和らげたようではあるものの、まだまだ解決しなければならない多くの問題が残っています。
10億ドルのライセンス要求か
6月12日のウォールストリート・ジャーナルによると、ファーウェイは米国の通信事業社であるベライゾン(Verizon Communications)に238件の特許に関するライセンス契約に同意するよう、圧力をかけている。すでにファーウェイの知財の責任者がベライゾンの関係者とコンタクトを取り、総額で10億ドル以上のロイヤリティを要求していると言われている。この紛争は少なくとも 20社のベンダーからベライゾンに提供された機器に関するものです。
ウォールストリート・ジャーナルによると、本特許はコアネットワーク機器や有線インフラからIoT技術にまで関連していると言われる。この動きは、特に米国政府と今進行している摩擦を踏まえた、ファーウェイの新しい戦略なのでしょうか。
また、米国で一番規模の大きい通信サービス会社にプレッシャーをかけて、ファーウェイが自ら立ち向かうことができるという米国へのシグナルだったのであろうか。あるいは、ただ単にベライゾンがすでに米国の顧客向けに5Gサービスを迅速に開始したので、ファーウェイはこの分野の多数の特許ホルダーとして、米国特許法における権利を行使して、特許の収益化を図っているだけなのでしょうか。
それとも、ファーウェイが米国での特許ライセンス活動を強化するために、より攻撃的なアプローチをとるという新しい戦略の方向性を示しているのでしょうか。
すでにファーウェイのような監視リストに掲載されている企業が特許侵害訴訟を提起することを禁じる法案が提出されているが、これは多数の者に広く批判されています。
2001年以降、60億ドルのライセンス料の支払い
おそらく現在の出来事を受けて、フアーウェイは「知的財産の遵守と保護:イノベーションの源泉」という題名のイノベーションと知的財産に関する白書を発表した。この白書において、フーウェイは2001年以来様々な企業に60億ドル以上のライセンス料の支払いを行っていることを明らかにしました。これらの企業の中にはアップル、AT&T、クァルコム、ノキア、エリクソン、そしてサムスンが含まれます。上記60億ドルの80パーセント以上は米国企業に対する支払いでありました。
しかし2015年以降、10億ドル以上のライセンス収入
同時に、ファーウェイは白書で自身が独自のライセンス戦略を策定していることを示しました。
2015年以来ファーウェイが獲得してきた14億ドルは、米国、欧州、およびアジアの企業との10件の異なる取引によるものである。もちろん、この数字は、特にグローバル市場で知財のライセンス収入を取得する経験の浅い企業にとっては、非常に価値があるが、ベライゾンへ要求している10億ドルは、非常に大きな要求のように見受けられます。
2018年の収益は1,050億ドル
ニューヨーク・タイムズによると、ファーウェイは世界最大のテクノロジー企業の1つで、2018年には1,050億ドルの収益をあげました。これにより、ファーウェイは収益の面で世界のテクノロジ-企業のトップ10に入り、グーグルやマイクロソフトのようなハイテク巨人たちの仲間入りを果たしました。ファーウェイはおそらく中国で最大のハイテク企業であり、中国のインターネット企業であるアリババ、テンセント、そしてバイドゥのようなビッグネームをも凌駕しています。これに加えて、ファーウェイはまた、2018年は80億ドルの利益を得たことも発表しました。
失われた収益は300億ドルか
しかし、ファーウェイがベライゾンに圧力をかけてから数日後、ファーウェイの創設者でCEOのRen Zhengfei氏は、以前より攻撃的ではなく、より悲観的な態度をとったようだ。Ren氏は、米国のファーウェイ締め出しにより、同社の収益が300億ドル減少する見込みだと述べました。 Ren氏はまた、同社を潰そうとする米国の取り組みを非常に過小評価していたと認めました。この告白(あるいは戦略的な動き)には驚かされました。なぜなら数カ月前に、ファーウェイの関係者らは多くの障害はあるものの、同社は自らの力で生き抜いていけると強く主張していたからです。
2018年の研究開発費は150億ドル
ファーウェイは確かに会社の長期的成長に尽力しているようである。
2018年にファーウェイは研究開発におよそ150億ドルを費やしたと報告されている。 この金額は、売上高の14%に相当します。ファーウェイのAndroidライセンスを取り消すというGoogleの決定、Intelとクアルコムがファーウェイにラップトップ用CPUの供給をやめるという決定、 そしてARMがファーウェイに対してチップデザインのライセンス供与を止めるという決定というような、最近の一連の出来事はファーウェイが自身によるイノベーションをさらに大きく引き上げることになると専門家は語っています。ファーウェイはすでに独自のオペレーティングシステムの開発に着手していると報じられており、知的財産に関しては、さらに大きな特許ポートフォリオを構築しようとしている可能性があります。
87,000件以上の特許
実際、ファーウェイはかなり大量の特許ポートフォリオを獲得してきた。 最新の白書に記載されているように、現在、ファーウェイは累積で87,000件以上の特許付与を得ています。具体的に述べると、2018年末の時点でそれは87,805件であり、その内11,152件が米国特許であり、6,600件を超える特許が欧州で付与されています。
ファーウェイは世界で一番中国特許を保有していると主張しています。実際、ファーウェイの研究開発への投資は増え続けているため、そのポートフォリオにおける登録特許の数も増えています。
11,000件以上の米国特許
ファーウェイは現在、米国と中国との間の貿易戦争に巻き込まれており、その11,000件を超える米国特許を詳しく調べてみる価値があります。
円グラフが示すように、このポートフォリオの特許の大多数のリーガルステータスは「有効中」であり、「放棄」または「年金未納による消滅」となったのはごくわずかです。Patentcloudで行われた調査によると、ファーウェイの約5,000件の米国特許が「ペンディング」となっています。
技術のカテゴリ(CPC)
ファーウェイが特許を取得しているさまざまな技術分類でそのポートフォリオを調べてみても、実際には特に驚くことは見られません。
上記チャートで示されているように、世界最大の電気通信機器メーカーであり、世界で2番目に大きいスマートフォンメーカーが、米国の特許ポートフォリオにおいて、多数のCPCサブグループH04(電気通信技術)とG06(コンピューティング・計算・カウント)の特許を保有することは理にかなっています。
特に、ファーウェイのH04特許の大多数はH04L(デジタル情報の伝送、電信通信)、 H04W(無線通信ネットワーク)、H04B(トランスミッション)の3つのカテゴリに分類され、最初の2つで、ファーウェイが取得した米国特許の大部分を占めています。
そしてG06カテゴリでは、G06F(電気的デジタルデータ処理)の特許が大部分を占めています。
また、ファーウェイが他の無関係な技術カテゴリの特許を大量に取得しているというような兆候は見られません。
この特許ポートフォリオの観点から、ファーウェイはコアビジネスとコア技術に集中していることは明らかでしょう。
誰が米国の特許ポートフォリオを保有しているか
また、ファーウェイテクノロジー自身またはその米国子会社であるフューチャーウェイ(Futurewei)がポートフォリオの大多数を所有しているため、ここでも特に驚くことはありません。
誰から特許を取得したのか
もっと興味深いのは、他社から取得したファーウェイの特許ポートフォリオを注視することです。 このリストには、Samsung、IBM、SHARPなどのビッグネームが含まれています。
特に注目すべきなのは、大規模な特許ポートフォリオに比して、全体として他社から譲渡された特許の数が少ないことです。これは、ファーウェイが長年にわたって米国特許の多くを独自に開発してきたこと、そして大量の特許購入によって米国特許ポートフォリオを強化、構築する必要がなかったことを示しているように思われます。
白書で強調されているように、ファーウェイの持続的な研究開発への注力が、米国特許の大量取得という形で実を結んだことを示している可能性もあります。
誰に特許を売却したのか
ファーウェイが他社からあまり多くの特許を購入していないのと同様に、米国のポートフォリオにおいてもあまり多くの特許を売却していません。
上記グラフから分かるように、ノキア(Nokia)はファーウェイから一番多くの米国特許を譲受している企業ではありますが、合計で163件に過ぎません。
やはり、第三者に譲渡された米国特許の総数は、11,000件以上の特許件数に比してかなり少ない。おそらくこれは、ファーウェイが収益を増やすためにこの種のマネタイゼーションに頼る必要がないことを意味します。あるいは、ファーウェイの事業戦略にこの種の特許のマネタイゼーション戦略が含まれていない可能性もあります。
ファーウェイの米国特許の価値分析
しかしながら、ファーウェイの付与後米国特許の価値分析(2018年末まで)を行うと、このポートフォリオを構成するのは主に低価値特許であることが明らかになりました。
事実、70%近くがCとDのカテゴリに属している。それでも同時に、ファーウェイはA以上の価値ランクに属する1,200件以上の特許を取得しています。
これは注目に値する数字である。同時に、ファーウェイはすでに3Gおよび4Gでその強みを発揮しており、ファーウェイの5G特許の多くが公開または発行されるにつれて、ファーウェイの5G特許ポートフォリオ全体の価値が近い内に明らかになるでしょう。おそらく、ファーウェイは米国の特許を取得するために積極的なアプローチを取ってきており、その結果、大量の低価値特許だけでなく、かなりの数の高価値特許も得ていると考えられます。
ファーウェイの米国特許の品質分析
対照的に、ファーウェイの米国特許ポートフォリオの全体的な品質は非常に高い。
事実、ポートフォリオの約65%がAAA、AA、またはAのカテゴリに分類される。これが意味するのは、この品質の分析モデルによれば、特許訴訟で無効化することが非常に難しい多くの米国特許を、ファーウェイは保有しているということです。ベライゾンのケースと同様に、もしあなたの会社にファーウェイがライセンス契約を持ち掛けてきた場合、ファーウェイが事実、訴訟で無効化することが困難な高品質の米国特許を数多く保有していることを知っておくとよいでしょう。
結び
ファーウェイの特許ポートフォリオ、特に米国特許ポートフォリオを調査することで、最近の行動が少し把握できたのかもしれない。以下のように考えてみましょう。
中国と米国との間の貿易戦争に巻き込まれ、米国のブラックリストに掲載されたファーウェイは、現在米国市場で自社製品を多く販売することができない。ファーウェイは売却可能な多数の米国特許を持っているとも考えられるが、我々の分析が示すように、ファーウェイの5G関連特許以前の特許については、その大半が低価値のカテゴリに属しています。
さらに、米国の特許を多数売却したこともなく、事業会社としては、特許売却を主な収入源として利用する可能性は低いと思われます。ファーウェイが保有しているのは、多数の高品質な米国特許です。 また、前半で説明したように研究開発にも何十億ドルもの費用をかけており、おそらくこの投資からのリターンを求めているのでしょう。
また、白書によると、以前はほとんど存在しなかったにもかかわらず、2016年以降に特許ライセンス活動が活発化していることが明らかになっています。米国特許のライセンス活動はファーウェイにとって自然な流れで選択されたように見えます。
このようなことから、今年6月にベライゾンに10億ドルものロイヤリティを支払うよう圧力をかけたことは、驚くことにはならないはずです。これは特許ライセンス活動を活性化するための最初の第一歩なのかもしれません。
このように、6月に公表されたファーウェイの白書では、ロイヤリティ収入・支払いを含む過去のライセンス活動を明確に示しているが、ファーウェイはこれから益々ライセンス活動によって収入を増やしていく兆候が見られます。ある意味では、ファーウェイは、ライセンス活動から年間10億ドル以上を稼ぐノキア(Nokia)やエリクソン(Ericsson)などの大物の仲間入りをしたいだけかもしれません。また、米国特許ポートフォリオおよび5G特許ポートフォリオの品質分析を行って、彼らはただ単に高品質の特許を持っているだけなのかもしれません。
ファーウェイの5G SEP特許ポートフォリオ:未来への鍵となるか?
ファーウェイは5G標準必須特許(SEP)に関しては明らかなリーディングカンパニーです。
実際、自身の白書において、ファーウェイは世界の4G SEPの10%、5G SEPの最大20%を保有していると報告している。他の5G SEPの報告書においても、ファーウェイは上記グラフのように5G SEPのトップを走っていることが報じられています。
以上みてきたように、5G SEP特許ポートフォリオはファーウェイの将来にとって非常に重要であることが明らかになりました。